2020年春に、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックで、「不要不急の外出自粛」が呼びかけられ、自治体から、商業施設や酒を提供する飲食店に休業要請が出されました。不要不急なのか、必要なのか、急ぎなのか、当時改めて生活を振り返る貴重な機会となりました。体温を維持できる服と、代謝が維持できる食料と、雨風がしのげる家の、衣食住があれば生活はできる。その他は「不要不急」なのだろうか。
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畑を見渡せば、ミミズが有機物を探し這いずり回っています。マメコガネは、葉を食べながら交尾をしてそれ以外は何もしていません。カラスはたまに遊んでいるとしか思えない行動をしますが、殆ど餌を探しているか、縄張り争いをしています。自然に生きている生物の殆どの行動は、生きるために必要であり、「不要不急」ではありません。
一方人間は、「不要不急」だらけです。人間は、まったく贅沢な生物に進化してしまっており、独房で生かされているだけでは狂い死にしてしまいます。退屈には耐えられず、何らかの刺激を求めて何かをしようとします。それが、恋愛なのか、井戸端会議なのか、宴会なのか、美食なのか、ファッションなのか、美容なのか、音楽なのか、スポーツなのか、映画、劇、TV番組、お笑いなのか、芸術なのか、文学なのか、はたまた所謂ドラッグなのか、その何かは無限に存在しています。そして、これら何かは殆ど全てが生命維持には「不要不急」であることに気付かされます。我々人間の経済社会活動は、ほぼ全てが「不要不急」なのです。
しかし、その中でも真善美に照らして、良い何かと悪い何かを分別することはできます。ドラッグに刺激を求めることは間違いなく悪でしょう。芸術は良でしょう。あるいはより良い何かを探すこと自体が最良なのかもしれません。このように、人間は、より良い刺激、より良い感動を選択し、探求し続ける生物に進化しており、人間同士がお互いに刺激、感動を受け渡し合って経済社会を形成しています。と考えると、人間にとって、「不要不急」は「必要」なのであり、逆に生命を維持することは「不要不急」とまで言わないにしても、それ自体は、人生の目的でも目標でもないということになります。
ドメーヌヒサマツのワインは、より良い刺激、より良い感動ランキングのできるだけ上の方に存在できるよう励みたいと思います。それができれば僕の人生もより良いものとなるでしょう。
(2023/1月)